2005年5月例会要旨

トビケラの付着による水力発電所への被害について−これまでの研究事例と現在の状況−
財団法人電力中央研究所 環境科学研究所 藤永 愛

水力発電所導水路壁面に付着するトビケラ類は、取水を阻害し発電出力を低下させる原因となっている。
トビケラ類による付着被害に関する調査は、1960年代を中心に盛んに行われていたが、1980年代以降の調査事例は無く、導水路におけるトビケラ類の生態は現在も不明な点が多い。このため、有効な防除法も確立されていない。そこで、水力発電所導水路壁面に付着するトビケラ類幼虫の効率的な防除法を開発するために、関連文献の収集および水力発電所への聞き取り調査を行い、発電所におけるトビケラ被害に関するこれまでの研究・調査結果と現在の被害状況を取りまとめた。


1.防除対象種 付着被害をもたらしているのはシマトビケラ類の幼虫で、水中の餌を捕獲するための網を持った固着式の巣を作る性質を持つ。これまでに5種の幼虫の導水路への付着が確認されており、この中でも付着生物群集の優占種であり防除の対象となるのは、ウルマーシマトビケラ、ナカハラシマトビケラの2種である。


2.トビケラ類の生態
(1) トビケラ類は幼虫から蛹の間は水中で生活し、水流に乗って下流に移動する。導水路の壁に付着するのは、こうして上流から流れてくる幼虫である。蛹を経て成虫となり、交尾を終えた雌は上流に移動して水中に産卵する。
(2) 一般に、成虫が羽化し産卵を行う季節は早春から晩夏にかけてである。幼虫の成長速度は水温などの環境要因に大きく影響されるため、羽化および産卵の時期や回数は、同じ種でも生息場所により異なる。


3.被害と対策
(1) 対策についての総説(柴田1975)によると、それまでに生物付着が原因で発電阻害が起きている水力発電所は全国で188箇所に上った。そのほとんどが上流から幼虫が流れ込みやすい水路式で、発電所における出力の低下は10%前後であった。
(2) 現在も水力発電の主流である水路式発電所について、被害報告があった4発電所において聞き取り調査を行った。発電出力は春から秋の初めにかけて低下しており、一般的なトビケラ類の羽化、産卵の時期に重なっていた。いずれの発電所の導水路でもトビケラ類の付着が認められ、これによる出力低下は約10%と推定された。
(3) 対策として、過去も現在も、導水路の水を抜いて物理的に幼虫を掻き落す方法がとられている。現在の作業も、通常は人力により行われているが、2箇所の発電所ではブラシあるいは水の噴射を用いた清掃車を導入し、労力を低減している。
(4) これまでに、天敵の利用、電撃を用いた流入幼虫の駆除について検討されたが、いずれも対象となる幼虫量、水量が莫大であることから実用には至っていない。防汚塗料についても、短期間の塗装が困難、化学物質が流出する可能性がある、などの理由から導入は困難とされている。


4.防除対策効率化の必要性 新たな幼虫の付着が少ない時期に清掃を行うことで、清掃直後の発電効率を長期間維持でき、対策の効率化を図ることができる。よって、導水路への幼虫付着量の季節的な変動を明らかにし、付着が減少する時期に清掃時期を調整する必要がある。

上記研究報告を入手したい方は 財団法人電力中央研究所 環境科学研究所 藤永 愛さん fujinaga@criepi.denken.or.jp へお申し込みください。


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