山地渓流に棲むキタガミトビケラの幼虫が入る筒状の巣(素材は植物破片)の縁には長い柄のようなものが付いていて、幼虫はその先を川中の石などにくっつけて漂うように生活している。
幼虫は、そのような状態の中、筒巣から頭部と胸部を突き出し、頑丈な六本の脚を広げ、上流からの流下物を捕らえると鷲づかみにして餌とする。流下物の中で主な餌となるのは、観察から水生昆虫であると推定される。
私がこの虫を知ったのは、もう20年位前のことになるが、当初からキタガミトビケラの幼虫がなぜ柄を持ち、一見不自由と思われる生活をしているのか不思議でならなかった。
その答えとして、現在私は、談話会の会員である興野昌樹さんの、
「自分から進んで流れに身を投じることにより、流下物を捕える効率を高めるためではないか」
という説を有力と考えているが、ほかに渓流の速い流れに対する適応説、魚などの外敵から身を守るごみ擬態説などもあり結論には至っていない。
ただ、いずれにせよ、柄の補強作業、渇水時における切り離し、縄張り争いとも思える2個体接触時の柄切り合戦など、キタガミトビケラの幼虫が生活する上で、その支持柄の影響が非常に大きいことは確かである。 |
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