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1998年5月例会 192回

キタガミトビケラの幼虫の生態

192回例会 1998年5月23,24日  自然・昆虫写真家
中瀬 潤氏の講演要旨です。
 



 
 
 
  山地渓流に棲むキタガミトビケラの幼虫が入る筒状の巣(素材は植物破片)の縁には長い柄のようなものが付いていて、幼虫はその先を川中の石などにくっつけて漂うように生活している。 
 幼虫は、そのような状態の中、筒巣から頭部と胸部を突き出し、頑丈な六本の脚を広げ、上流からの流下物を捕らえると鷲づかみにして餌とする。流下物の中で主な餌となるのは、観察から水生昆虫であると推定される。 
 私がこの虫を知ったのは、もう20年位前のことになるが、当初からキタガミトビケラの幼虫がなぜ柄を持ち、一見不自由と思われる生活をしているのか不思議でならなかった。 
 その答えとして、現在私は、談話会の会員である興野昌樹さんの、 
 「自分から進んで流れに身を投じることにより、流下物を捕える効率を高めるためではないか」 
 という説を有力と考えているが、ほかに渓流の速い流れに対する適応説、魚などの外敵から身を守るごみ擬態説などもあり結論には至っていない。 
 ただ、いずれにせよ、柄の補強作業、渇水時における切り離し、縄張り争いとも思える2個体接触時の柄切り合戦など、キタガミトビケラの幼虫が生活する上で、その支持柄の影響が非常に大きいことは確かである。
 
 発表当日は、上記のことを含め、キタガミトビケラの幼虫の行動をあくまで写真観察記としてスライド上映した。 
 なお、会場では山形大学の奈良さんより、キタガミトビケラの成虫の行動について貴重な情報をいただき、後日氏ご協力のもと確認できた。これにより、燻ってきていたキタガミ熱が再燃しそうである。

写真解説 
写真(上) 支持柄の補強をするキタガミトビケラの幼虫
写真(中) 渓流に過ごす
写真(下) 筒巣に付着物を沢山つけた若令幼虫