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12月例会 第187回 例会

茨城県涸沼における底生動物相とその優占種について

鷹取裕美子 さん(chelo@dc.mbn.or.jp) (株)環境測定サービスの講演要旨です。
 

汽水湖の環境は淡水域と海水域の影響を受け複雑に変化する。
そして、汽水域に固有な種と海水域または淡水域の種で構成され特徴ある生物相を示す。
今回、水戸市南東約10kmにある涸沼(長さ約8q、幅約2q、平均水深約2m)の底生動物群集の構成と優占種の生活様式を調査、解析した。
調査地点を4地点設け、1995年3月から1996 年10月まで底生動物調査と環境要因の測定を行った。
採取はエックマンバージ型採泥器で採泥し、サーバネット(メッシュサイズは0.5o目か0.3o目)で動物をふるい分けた。
最上流部にあたる親沢の底層の塩分濃度は低く、最も深い宮前(湖心部)の塩分濃度は最も高く、夏に低酸素状態になることがあった。
下流側の広浦と秋月は水流が速く、塩分濃度は親沢と宮前の間であった。底質は、親沢は植物体の有機物が多く、広浦と秋月は粘土質と砂質、宮前は完全な泥質で強い硫化水素臭がした。
今回、5門9綱22種2分類群の底生動物が確認された。宮前で、総種数、総現存量、総個体数の全てが最も少なかったが、これは生息条件が悪いため、底生動物の定着が困難だからと考えられる。
優占種は上流側に出現する種(オオユスリカ、ヤハズユスリカ)、下流側に出現する種(ヤマトシジミ、甲殻類のヘミロイコンヒヌメンシス)、全地点に出現する種(環形動物のヤマトスピオ、シダレイトゴカイ)に分けられた。
次に優占4種の生活史と繁殖期を追った。ヤマトスピオ、シダレイトゴカイは夏に新生個体が定着した。
ヤマトスピオは年1世代であるが、シダレイトゴカイは1年以上生存する可能性があった。オオユスリカは5月と8月から10月に蛹が出現し、少なくとも2化性だと思われる。宮前では、塩分耐性の最も強い4齢が出現し、3齢はあまり出現しなかった。また、オオユスリカは1995年には大量に出現したが、"1996年" は出現しなかった。
この要因は本種自身の個体数変動の不安定さと、環境の変化によると考えられた。ヤハズユスリカは春と秋に新しい世代が出現し、少なくとも年2 化と推定された。



写真説明 :>茨城県 涸沼
写真説明:>涸沼とサンプル採取場所
写真説明:>1. 環形動物 上からシダレイトゴカイ、ヤマトスピオ、ケヤリ sp.、左の体長が短いのと右下の頭だけのものがゴカイ、下のまるくなっているのがヒルの一種
写真説明:>ユスリカ科 上からオオユスリカ、ケヤリsp.、ヤハズユスリカ
写真説明:>貝類 上ヤマトシジミ、下左二枚貝sp.、中サカマキガイ、右カワザンショウガイ