昆虫は地球上の様々な環境に適応し,多くの種を有する分類群のひとつです。昆虫の多くは卵,幼虫,蛹,成虫の時代を経て一生を終えます。 水生昆虫Aquatic insectsとは,一生のうちの一時期あるいは全てを水中で過ごす昆虫たちの総称です。昆虫類は分類学上,32目に分けられますが, そのうちの12目(トビムシ目,カゲロウ目,トンボ目,カワゲラ目,バッタ目,カメムシ目,アミメカゲロウ目,コウチュウ目,ハエ目,チョウ目, トビケラ目,ハチ目),日本ではバッタ目を除く11目に水生昆虫の仲間が含まれているといわれています。カゲロウ目,トンボ目,カワゲラ目, トビケラ目のほとんどの種は水生昆虫の仲間で,卵から幼虫あるいは蛹時代を水中で過ごします。カメムシ目では,アメンボ,タガメ, ミズカマキリなどがよく知られています。またコウチュウ目に属する水生昆虫としては,日本の夏の風物詩ホタルや,ゲンゴロウがいます。 現在までにおよそ150万種もの昆虫が知られていますが,水生昆虫の仲間と見なされるものは約4万種ほどで, 昆虫全体からするとわずか3%にも満たないことになります。
   水生昆虫が生息場所として利用している水域は海水,汽水,淡水と多岐にわたります。また生息環境の違いに着目して, 水生昆虫のなかでも湖や池などの止水に生息するものを止水性昆虫(Lentic insects),流水に生息するものを流水(河川)性昆虫(Lotic insects) と区別することもあります。カゲロウ目,カワゲラ目,トビケラ目では70%以上の種が流水生昆虫であるといわれていますが, 逆にトンボ目では80%以上の種が止水性昆虫の仲間に入ります。
   写真に示したのはヒゲナガカワトビケラとオオヤマカワゲラの成虫と,エルモンヒラタカゲロウの亜成虫です。 3種とも卵,幼虫,蛹(トビケラのみ)時代を水中で過ごし,羽化してからは陸上で生活します。それぞれの成虫は山地渓流の水辺や河川近くの 樹木上などで見られます。
(花田 聡子)

 
ヒゲナガカワトビケラ成虫
水中羽化した成虫は泳いで岸にたどりつきます。
この時魚に狙われる。

早春の太陽の沈む頃に羽化が始まる。

オオヤマカワゲラ成虫
30mmを越す大型種、翅は茶褐色で静止時には薄いクリーム色の縁取りがある。

羽化は4〜5月頃本州に分布

エルモンヒラタカゲロウ亜成虫
全身不透明、複眼は灰色フライは浮力を考えエルクを使った
写真及び解説は会員宮下 力氏の協力をえました。 〔鱒達のメニューより抜粋〕
フライフイッシングとはこれらの水生昆虫の生態を観察して毛ばりを作り、魚釣りをするスポ−ツです。